精子提供
精子提供は、様々な理由で自己の精子を採取することができない男性や、シングルあるいは同性カップルの女性にとって、子供を持つための有用な手段です。
精子提供のプロセス
以下のステップで行われます。
- ドナー選定
【精子バンク】
精子バンクからドナーを選定します。
一般的には、個人を特定できない範囲でドナーの基本的なプロフィール(健康状態、遺伝的背景、社会的背景など)の情報が提供されます。
【個人ドナー】
レシピエント(提供を受ける方)が、ご家族や友人など知り合いに個人的に提供を依頼します。個々の同意のうえで手続きに進みます。
ドナーの感染症や遺伝性疾患のリスクが適切に評価されていない場合、レシピエントや出生するお子様に健康上のリスクが高まる可能性があるため、事前に検査をすることが推奨されます。 - 精子の提供
一般的には凍結精子の状態で提供されます。 - 不妊治療
提供された精子を使って人工授精や体外受精・顕微授精を行います。
精子提供の有用性
- 不妊治療への貢献
男性が様々な理由で自己の精子を採取することができない場合に、ドナー精子を使用することで妊娠の可能性を高めることができます。
また、男性が遺伝性疾患の保因者である場合に、保因者ではないドナーの精子を使用することで、子供がその遺伝性疾患を持つリスクを大幅に減少させることができます。 - 多様な家族形成への貢献
「パートナーはいらないが子供を持ちたい」と考える女性が、結婚やパートナーシップに依存せず、自分の意志で家族を築くことができます。
また、レズビアンカップルや、トランスジェンダー男性(FTM)が子供を持つことを希望する場合、精子提供は非常に有効な選択肢となります。
精子提供の課題と展望
上記のように、精子提供は多くのカップルや個人が子供を持つという夢を実現する手助けとなっている一方で、法的問題(法規制が整っていない)、倫理的な課題(ドナーの匿名性や児の出自を知る権利など)が指摘されることもあります。
これらの問題点の対策については、多くの国で関係法規やガイドラインの整備が進み、提供者と出生する子供、双方の権利を両立させるための取り組みが進められています。
日本でも精子提供の需要の高まりに合わせて、法の整備1)や関連機関での議論2,3)が進んでいるので、近い将来にはより多くの人々がこのプロセスの恩恵を受けられるようになると考えられます。
※備考
1)2020年12月成立・公布:生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律 他人の精子を用いる生殖補助医療により出生した子についての嫡出否認の特則
2)2021年6月公開:日本産科婦人科学会「精⼦・卵⼦・胚の提供等による⽣殖補助医療制度の整備に関する提案書」
https://www.jsog.or.jp/medical/829/
3)2023年1月開催:日本産科婦人科学会シンポジウム「精子・卵子・胚の提供等による⽣殖補助医療について-議論すべき課題の抽出-」
https://www.jsog.or.jp/medical/839